箸休めに、読書の話|8月に読んだ本
前回の【読者限定】記事にも少し書いたのですが、本のセレクトは新聞の書評や、本屋さんで見かけて気になったもの、友人に教えてもらったものなど、いろいろ。ChatGPTに「ゆこさん、きっと好きだと思うよ」と紹介された本も。少し疑いながら読んでみたのですが、しっかりと好みのものを薦めてくれました。
8月に読んだ本。まずはこちらから、ご紹介します。
◆『けんぐゎい』朝倉かすみ著(光文社)

最新の直木賞受賞作としても話題の時代小説。書影からもう、粋! 中身も決して裏切らず、江戸言葉などバイタリティあふれる表現に魅了されっぱなしでした。
体のほぼ一面に痘痕(あばた)を持つ、利発な少女ふゆは、あるとき手籠めにされ、懐妊します。たどり着いたのは、女性から崇められる女医師のもと。そこで彼女の人生が大きく動き出す、という物語です。
ふゆをはじめ、さまざまな境遇の女性が出てくるのですが、彼女たちが人生にどう納得感を持っていくのか。「自分はどうだろう?」と問われる瞬間の多い作品でした。今だと糾弾されそうな出来事にも、彼女たちは彼女たちの方法で向き合っていく。特にふゆは冷静沈着に、愛情深く、人間の本質に迫ろうとします。
そんなふゆの、心の暗闇の奥にある黒珠。この黒珠の正体を自分なりに解釈したとき、救われた思いがしました。ぜひ、ネタバレの前に読んでみてほしい。
◆『嘘つきアーニャの真っ赤な真実 』米原万里著(KADOKAWA)

著者の米原万里さんが9歳〜14歳まで過ごしたプラハのソビエト学校。そこで出会った女友達との日々や、その後の彼女たちの人生を追うノンフィクションです。
ソ連解体、プラハの春、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争など、そこで生きた人たちの実感が迫ってくるような1冊でした。著者を含め、人種が異なる4人の女性。彼女たちの人生は、“民族”という意識から切り離すことができません。○○人というだけで、迫害を受けたり、戦争禍に置かれたり、あるいは特権を享受したり。
祖国を大切に思う気持ちが尊いことに異論はありません。でも、民族主義が引き起こす軋轢にはどうしても憤りを感じます。2026年の今も、あちこちで止まらない分断。異なるアイデンティティを持つわたしたちは、どうしたら皆が心地よく、安心して暮らせるのだろうかと考えさせられました。
少し前に読んだ『バラバラな世界で共に生きる:リチャード・ローティの哲学』(朱喜哲著、NHK出版新書)が、ふと心に浮かびました。違いを理解し合いながら、対話を続けること。この2冊は、併せて再読したいなと思っています。
◆『タリバンの世界 秘密学校の少女たち』川上珠実著(毎日新聞出版)

約20年ぶりにタリバンが実権を奪取したアフガニスタンでは、女性の教育が大きく制限されている。そこで生きる女性たちの現状、そして祈りを、ありのままに届けてくれる1冊。
その土地に住む人たちの文化を批判したいわけではないのだけれど、それまで描けていた未来を突然奪われてしまった女性たちの悲しみには、目を向けるべきだと思いました。弾圧下にある状況で、娘に夢を持って欲しいと願うお母さんの言葉。その切実さは、今も心に残っています。ご自身も小さなお子さんと一緒に生活しながら、危険な取材にも果敢に挑む著者の熱意に感服しました。

◆『世界の果ての本屋さん』ルース・ショー著/清水由貴子訳(晶文社)
ニュージーランドの最南端にある本屋さんを営む店主。彼女の人生は喪失の旅であり、波瀾万丈。ほのぼのとした書影からは想像できない激動の過去で、読んでいて胸が締め付けられる思いでした。そしてたどり着いた安寧の地・マナポウリ。小さな本屋さんがある土地は、どんなところなのかなぁと、想いを馳せています。
◆『かわいい女・犬を連れた奥さん』チェーホフ著/小笠原豊樹訳(新潮社)
パートナーの人生に染まることでしか生を輝かせられない『かわいい女』など、7つの短編を収録。普通の人々の生活をここまで繊細に表現するものなのかと驚かされました。特別な出来事は起こらなくても、わたしたちが過ごす日常ってちょっと変で、実はストーリー性に富んでいるのかも? 特に、不条理や人のままならなさをそのまま描く『谷間』と『いいなづけ』が好みでした。冒頭で書いた“ChatGPTに薦められた本”はこちらです。
◆『パッキパキ北京』綿矢りさ著(集英社)
集中力が続かないわたしでも一気読みできるほどのスピード感! 超ポジティブキャラな元銀座ホステスの北京ルポ、最高すぎました。コロナ感染の怖さも、異国での不便さも、何のその。どんなときも自ら楽しみを見つけに向かう主人公の生き様がかっこいい。一方で、中国の貧富の差など、陰と陽が描かれているところも興味深かったです。
◆『腹を空かせた勇者ども』金原ひとみ著(河出書房新社)
中学生・玲奈の、エネルギーにあふれた日々。素直で、前向きで、腹ペコな玲奈がかわいくて、読みながらこちらまで元気になれる1冊でした。玲奈は羨ましい限りの陽キャだけど、友達が抱える苦しみに自分は何ができるだろうかと悩むこともある。そのいたいけなさを、理路整然人間のママやお姉さん的存在などが支えるハートフルストーリー。スマホで即つながれる現在の若い子たちってこんな感じなんだなと、別世界を見るような気分にもなりました。
おまけ【図録】

こちらは夏休み中に訪れた『浮世絵スーパークリエイター 歌川国芳展』(京都市京セラ美術館/9月23日まで)の図録。展示はエンターテインメント性に富んでいてとても面白かったです! 興奮そのままに、家でも図録を眺めて楽しんでいます。
最後まで読んでくださりありがとうございました。気になる作品はありましたでしょうか? ご感想やおすすめなど、ぜひ教えてください。
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